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法務技官の戦場

元法務技官(矯正心理専門職)が仕事についてあれこれ語るブログ。

法務技官の仕事①~鑑別~

 

法務技官という名前がそもそも聞き慣れないと思います。

余り有名ではありませんが、主に少年鑑別所や刑務所で働く法務省の専門職員です。

まず、大雑把に簡単な区別を。

 

法務技官の中でも、このブログでは主に心理職に携わる職業を指します。

一般的には法務技官(心理)のように表記されることが多いですね。

 

法務技官には3種類あり、心理の他に、作業専門官や国際専門官というものもあります。その中でも、特に心理に特化している場合に心理技官と呼んだり、少年鑑別所で鑑別業務に従事する場合に鑑別技官と呼んだりします。

 

 

さて、ではその鑑別技官とはどのような仕事をするのでしょうか。

ここでは主に少年鑑別所での仕事をご紹介します。

 

 

※法務技官は少年鑑別所以外にも様々な勤務地があります。

 ここで書いていることが仕事の全てではなく、ほんの一部に過ぎないので、注意してください。

 

 

まず、法務省のサイトを見てみましょう。

 

 1 少年鑑別所に勤務した場合

  少年鑑別所は,主に家庭裁判所の観護措置決定によって送致された少年を収容し,医学,心理学,社会学,教育学等の専門知識に基づいて,資質及び環境の調査を行う施設です。

  少年鑑別所では,少年に対して,面接や各種心理検査を行い,知能や性格等の資質上の特徴,非行に至った原因,今後の処遇上の指針を明らかにします。
   また,審判決定により,少年院に送致された少年や保護観察処分になった少年にも,専門的なアセスメント機能を活用して継続的に関与します。
  その他,地域の非行及び犯罪の防止に貢献するため,一般の方からの心理相談に応じたり,学校等の関係機関と連携した非行防止や青少年の健全育成のための取組にも積極的に関与したりします。

 

法務省:矯正心理専門職区分

 

法務技官が相手にするのは、主に非行少年です。

ご存知のとおり、現在日本では少年法という法律の規定があり、20歳に満たない者が犯罪を起こした場合は大人とは違った法的手続きをします。

細かいことを話すととても長くなって趣旨がそれるので、大まかな説明をします。

そのような非行に至った少年の内の一部は、少年鑑別所に入所をします。

少年鑑別所では、なぜその少年が非行に至ったのか、主に心理的な部分を中心に調べます。

例えば、やはり未成年が一番強い影響を受けるのは親なんですね。とても極端な話をすると、親から犯罪をやるように言われると、やってしまわざるを得ません。家庭環境は非行少年にとってとても重要です。

他にも、交友関係、知的能力、精神状況、認知的特性、性格や行動傾向、価値観、あらゆる面が非行に影響しています。

それらを総合して、最終的な判断をします。これが鑑別です。

 

では、具体的にどうやって調べているのでしょうか。

 

・鑑別面接

面接ですね。基本的に少年と一対一で話します。これが一番アセスメントの中心になると思います。本人の口から直接、非行のことやこれまでの生い立ちのことなどを聞きます。

面接時間や回数は人によってばらばらです。最初の頃はどうしても多くなりがちです。

 

・心理検査

いわゆる心理テストですね。もちろん、心理職が行う本格的なものです。

個人的には、ウェクスラー式知能検査(WAIS-Ⅲ、WISC-Ⅳ)やロールシャッハ・テスト、バウムテストなどの描画法が多い印象でしょうか。

これらの心理検査もほとんど全て法務技官が実施します。特に最初の頃は習熟の意味も込めて実施する機会が多いのではないでしょうか。

 

・ケースカンファレンス

非行少年と関わるのはもちろん法務技官だけではありません。

少年鑑別所には観護という少年の生活の世話や助言を行う部署があります。

そこでも担当の法務教官の職員がつきます。その方と様々な情報交換をすることも大切です。

また、家庭裁判所調査官という家裁の職員も、少年の調査を行います。家裁調査官は少年鑑別所では手に入れられないような情報を手に入れていることがあるので、やはり情報交換は大切です。

あと、最初の頃は上司や先輩に相談するのがいいでしょうね。私もよく聞いていました。

 

・鑑別結果通知書

これらの鑑別の結果は、最終的にレポートにまとめられます。

これが法務技官の一番の存在意義であり、一番の難所だと私は思っています。

とにかくこれが大変なんですよ。

それほど長くない文章なんですが、これを作成するのに、最初の頃は14時間くらいかかっていました。ああでもないこうでもないと推敲を重ね、ようやく完成したと思って上司に見てもらったら、添削だらけで返ってくる……。法務技官あるあるです。

最初の頃はとにかく訂正だらけです。一人前の法務技官になるには、10年かかるとも20年かかるとも言われています。職人みたいですね。

何がそんなに難しいかと言うと、人間の心理を自分なりに理解し、非行に至った原因を説明する、専門的なことを分かりやすく伝える、これがとても難しいんですね。

ただ、この大変さは同じ職場で働く法務教官の方にも余り分かってもらえません。「なんか大変そうだね」くらいの感覚に思われていることが多いと思います。この苦労は、実際に書いた人でないとなかなか分かりにくいのかもしれません。

 

 

 

以上、とても簡単に鑑別について書きました。

何度も言いますが、これは法務技官の仕事のほんの一部なので、くれぐれも注意してください。

更には、私の偏った意見が反映されていると思いますので、その点もご注意を。